「お宅のグループの営業マン、どうなってるの?全く話にならないよ!」
いつもは温厚な設計部門の次長が珍しく怒っている。
それまでチーバカのところでやていた原図のコピーサービスを、グループ会社であるE印刷に移管してまもなくのことであった。

印刷ミスが起こり、担当営業に原因を問質したが、
原因には答えず、「値引き処理をする」と繰り返すだけ。
そんな営業と話しても埒が明かないので、チーバカを呼んだのだと言う。
な〜るほど。

いったい、製造業にとって最も重要とされるものの一つが『品質』である。
特に設計部門は『品質』には厳しい。
だからミスが起こった場合、必ず原因究明が求められる。
でなければ、また同じミスを起こしかねない。

ミスをが起こるのは仕方の無いことである。
しかし、同じミスを繰り返す。
それは信頼を大きく損なうことになる。
それを防ぐために原因を究明する。
製造業に限らず、もっとも基本的なことなのである。
しかし同じ製造業である(はずの)E印刷の営業に話しが通じない…

そして、そんな営業マンをよこすような会社へ移管させたE事務機への不満も含めてチーバカが呼ばれたのであろう。
なぜなら、筋をわきまえた次長がチーバカに怒りをぶつけることは本来考えられないからである。

しかし、チーバカと話をするにつれて次長の怒りはすぐに収まった。
チーバカはただ話を聴いていただけであるが、
次長の考えを理解していたし、次長にもそれがわかったからである。
そして、チーバカに
「なんとかして欲しい」と。

世にクレームをいうものがある。
そして多くの人はそれを嫌う。
なぜなら多くの場合「怒り」というかたちで表現されるからである。
しかし、実際のところクレームの大半はこれなのである。
つまり、「なんとかして欲しい
それがわかってから、チーバカ。
クレームが好きになったのである。
「なに?私の力が必要とな?う〜む、やるだけのことはやりましょう。ムハハハ!」

クレームに限らず、人が「怒る」というのは「困っている」ことの裏返しなのではなかろうか?
今はそう思っている。

え?この件に関してどう対応したかって?
E印刷の責任者を引っ張り出しました。
問題の本質が「営業マンをよこすような会社」にあると理解したので、
E印刷の姿勢を説明しうる立場にある人間と話すのが一番だと。

「そんなことなら、チーバカに頭を下げなくったて、直接『ゴッルラ〜責任者呼べ!』でいいじゃん!」
でもそれはそれでパワーが要るし、相手も身構えちゃって効果があまり期待できないっしょ。
話を理解してるチーバカを使って、先にやんわり真意を伝えておいた方が期待が持てるっしょ?
次長の『喧嘩』の仕方はとても正しいと思うチーバカでありました。



04/24|営業職人コメント(16)TOP↑
工場長を前に、用意した資料を基に概要を説明・・・
したとは思うのだが、この辺は覚えていない・・・。
おそらく、「通信するデータによって必要なものが決まる」ので
「どんなデータをやり取りするのか?」と訊いたかと思う。
『なにに使うか』訊く
それがチーバカにとっての目的であったから。

販売管理データだという。
『?? ここは工場。販売管理データが必要なのだろうか?
『あるいは、本社での受注データを基に生産計画を…ということか?』
工場長は、チーバカの疑問に答えるように、話しを続ける。

「実は、本社の経理部で販売管理システムの導入の話しがもちあがり、」
生産管理システムを考えていた工場部門としては、
将来データ上の問題から、販売管理システムに制約されてしまうことを恐れ、
工場側から販売管理システムを逆提案しようと考えたのであった。
そして、本社サイドで導入を考えているのが、
「実はリコー…」なのであった。
そしてそれは、こちらにも支店がある事務機器販売店が営業をかけてるとのこと…。

ひょっとしたら誤解する向きもあるかもしれないので、言っておく。
これは決して部門間の勢力争いではない。
製造業にとっては生産現場こそが命、
したがって販売管理よりも生産管理が優先されるのは至極もっともなことなのである。
「初めてコンピューターを導入。先ずやりやすいところから」
営業に勧められている本社の経理部の様子が想像された。

なるほど!
それで「リコー以外」であったか。
リコーへの対抗として、まさかリコーを推すわけにはいかないのである。納得、納得。
これで全てが見えた。
あとは最良と思える提案をするだけ。
売れようが、売れまいが、自分の会社ならこう考える。
そんな視点から。

定見のない営業なら、
あるいは、売るために「データの互換性」の高さと、リコーと比較した場合のメリットを強調するかもしれない。
も少し、頭の回る営業なら、メリットでリコーを蹴落としておいて、その実「互換性」に種々制約のあるシステムを推し、
将来の生産管理システム自体、他社を排除することを目論むかもしれない(役所の入札でそれに類似したやり方を時々目にする)。

それはさて置き、
信頼こそが営業の要と考えるチーバカ。
工場長の話が終わるのを待って、意を決したかのように切り出す。
「販売管理データの通信ということであれば、今日お持ちしたNECの方がリコーよりも柔軟性があり、おそらくはトータルでも勝っていると思います
「でも、『生産管理』まで考えておられる、というか、今のお話しではむしろ『生産管理』に重点を置いてらっしゃる。
「であれば、私としては『リコー』をお薦めします。」

工場長の『ムムッ!』という顔をじっと見ながら、
NECの販売姿勢(いいハードを安く提供します、どなたでもご自由にお使いください→パーソナルからヘビーユーザーへ)と
リコーの扱うIBMの姿勢(システム設定を前提として、例えばリコーのような設計・管理のできるディーラーを主に→システムユーザーからヘビーユーザーへ)の違いを説明。
工場における生産管理システムは夫々の会社独自のものであり、
更に、ただでさえシステム導入時に混乱を起こしやすいときに、バックアップ体制がとれないメーカーであれば、
製造業にとって根幹である現場に重大な問題を引き起こすことになること。
などを、じっくり説明する。
「だから、専門のSEやプログラマーをもち、多業種の生産管理システム導入のノウハウをもったリコーをお薦めします」

「わかりました」と工場長。
少し間を置いて、「リコーで進めたいと思います。販売会社は(本社には)お宅をあげさせていただきます」
チーバカ「・・・(うわ凄い、判断力の早い人だなァ)ありがとうございます。」

翌日だったか、翌々日だったか?
工場長から電話があった。
「生産管理システムの検討を始めることになったので、打ち合わせに来てほしい…」
販売管理ではない、生産管理である!
工場長・・・恐るべし。
最低1000万の契約がほぼ確定したのであった。
11/09|営業職人コメント(10)TOP↑
「欲しい」客に売らなかった、
「要らない」物を売った。

今回は「欲しいメーカー」ではなく「要らないメーカー」の物を売る話し。

「リコー以外のパソコンが欲しい」
そんな話しを営業がもらってきた。

NEC全盛の頃、事務機器販売店は富士通系かIBM系が主力商品であった。
当社はコピー・FAXなどでリコーの代理店であったため、提携するIBMを主力としていた。
とはいえ、システム商品が主のIBM、
小規模の事務機器販売店の手に負える商品ではなく、リコーに「おんぶにだっこ」、
ただ情報をあげるだけの、「営業」とは言えない営業がほとんどであった。

ただ、チーバカだけ、なにやら「システム課」と勝手に名乗り、
ポツポツ、小規模事業向けにパソコンを販売していた…。

「リコー以外」
パソコン自体、その何たるかがあまり理解されていない頃のこと。
話しは必然的に、自称「20歳」…いや自称「システム課」のチーバカのところに舞い込んでくることになる。

従業員100人?ほどの製造の会社。
工場長がパソコンで「通信したい」のだが、「リコーではだめ」なのだと言う。
はて?不思議なはなしである。
「何を通信するの?」
それはわからないと言う。
「なぜリコーじゃだめなの?」
それもわからない…。

本当は、直接行って訊きたいところであるが、
訊きにいくわけにはいかない。

余談ではあるが、これが営業のセンスである。
実はもうチーバカと客の会話は始まっているのである。
客は営業を通して当社に「パソコンが欲しい」と伝えた。
そのときに会社を代表して話を訊いた営業が質問しなかったのだから、
会社として「はいわかりました」と言ったことになる。
なんらかのリアクションが必要になる。
それなしに、再び行って「なぜ…?」と訊くことはできない。
「『わかった』と言ったのに、また話しをしなきゃいけないの?」
気の短い人なら、
「わかった、もういいよ!(別のところに頼むから)」
ということになってしまう。
そしてそれは、決して故無きことではない。
「うちに『子供の使い』のような営業マンをよこすとは、軽く見られていか、基本ができていない会社か、どっちにしても話しがスムーズに進まない会社だなァ」という、
無意識の心のあらわれなのである。

で、チーバカ「『なぜ…』かを訊くために」
客の要望を満たすための仕事をする。
当時、パソコンと言えばNEC。
「『工場長が勉強のため、人気の高いNECでパソコン通信をやってみたくなった』という設定」で。
(もしこれが間違った設定であったとしても、問題はない。だって、『なにに使うか』言ってくれなかったんだも〜ん!「訊かなかった営業も悪いけど、言わなかった工場長にも落ち度はあるからチャラねっ!エヘヘ」ってところ。多分リコーの代理店に無理にNECを出させた後ろめたさもチョイトはあるはず…)

「ネット」などと言えば「ミカンを入れた網」くらいしか思い浮かばない頃のこと、
通信用パッケージソフトと、場合によっては専用にプログラムを組む場合の概算を用意。
NECの98(キューハチ)で概算見積もりをする。

さて、営業マンと二人で、営業に出かける。

と、いうところで、♪ちょ〜ど 時間と〜なりま〜した♪
面倒な前置きにお付き合いいただき、申し訳ありませんが、
本題は次回ということで。
11/06|営業職人コメント(6)TOP↑
さて、「売らない」営業の続き。

「わざわざ来て貰ったのに、なんか申し訳ない」
実は、「売らない」ことに決めてから、この言葉を待っていた。

初対面の営業で一番難しいのは、
「いかに話を聞いてもらうか?」
なのである。
ただ話を聞くということではない。
必要かどうかを真面目に判断しながら「聞いてもらう」。
多くの場合、営業の話など上の空、『どう追い返そうか』考えながら聞いているものである。
そしてそれは、当たり前のことなのであるが、
売れない営業は、そんな状況でも売ろうとする。
結果、お客はイライラし、『二度と隙は見せまい』と心を閉ざすのである。
そしてその営業は、そこへは行きづらくなってしまう。
潜在需要があるかもしれないにもかかわらず。

さて、「・・・申し訳ない」。
この言葉で、お客の「聞く体勢」が整った。

と言って、売り込みに入るわけではない。
「いらない物」は売っても、「必要のない物」は売らない。
必要性があるかどうかを聞かなくては・・・。
もちろん、本人が不要と思っているものでも、必要な場合がある。
それを含めて「聞く」のが営業の仕事である。

「いえ、それが営業の仕事ですから・・・」
とひとまず相手を油断させ、
「でも、せっかくですから、キャンペーン中なので複写機のカタログだけでも置いていきますので見て下さい」
営業色を極力抑えた表現のつもりであったのだが、
意外な反応が返ってくる。
前置き無しに「うちは複写機はいらないよなァ」横に同席していた奥さんに同意を求める。

なぜ意外か?
売り込みもしていないのに、「…申し訳ない」に続く言葉としては、あまりにはっきりとした拒否反応だからである。
普通の話の流れであれば、二つの言葉の間につなぎの言葉が入ってしかるべき。
たとえば、「ああ、なるほど営業さんは大変ですねェ。でもうちは…」とか、
「複写機ですか、結構高いんでしょう?」とか。
「…申し訳ない」には、少なくとも、帰って欲しい営業をあしらうような言葉は直接は続かない。

売るつもりではなく、必要性を聞くだけのつもりであったのだが、
どうやら必要性を感じているようである。
必要であるからこそ、売り込まれることを必要以上に警戒しているのである。
それが言葉に表れる。

そんな場合は、売り込んではいけない。
警戒心を解くのが一番。

「そうですよね。事務員さんが大勢いて、書類がたくさんあるわけでもないでしょうし…」
「そう、そう。うちは大きい会社じゃないし」

しかし、一つだけ確認しておきたいことがあった。
縫製の型紙。
実はそれに複写機を使っている会社があると聞いていた。
この会社ではどうか?

「型紙をコピーするのに使っている会社もあると聞いていますが、普通の複写機じゃあA3までしかコピーできないですし…」
この話に社長が反応する。
(社)「普通紙で大きいのをコピーできるのって、幾ら位するもんなの?」
(チ)「100万から先しますね。」
(社)「そんなにするんじゃなァ・・・」

おや、おや、「いらない」んじゃなかったっけ?
なるほど、型紙に使うんだァ・・・

(チ)「こちらは型紙はどうされてるんですか?」
(社)「(オッと、油断してた!)いや、うちは青焼機(あおやきき)があるから。」
   【注】青焼機:大きな図面をコピーする機械。但し特殊な用紙のため陽に当たると色あせしてしまう。
(チ)「あ、青焼なら大きいし、寸法も普通紙より正確だから、陽に当たらないようにしておけば、その方がいいですよね。」
(社)「う〜ん、色あせするから、うちは普通紙にコピーして使ってるんだけど(あ、しまった!)、
「使う頻度も少ないから、すぐそばのコンビ二で十分間に合うから」
(チ)「そうですね。近くにコンビニがあれば、わざわざ場所をとる機械を入れなくてもいいし、
「実のところ、10円コピーの方が安いんですよ。
「メーカーが言う『A4標準原稿』でトナー代が8.5円というのは挨拶文程度で、実際の文書は倍近いし、ベタなら何倍もかかってしまうんです。
「それに用紙代がかかるし、修理は自分で管理しなきゃならないし…」

(社)「でも、雨の日とか、急いでいるときなんか大変なんだよねェ…」
社長は話の間中、奥さんの顔をチラチラと見ていた。

チーバカ、可笑しくて仕方がなかった。
本当は、欲しかったのである。
「いらない」理由は、多分奥さんに言われていたことであろう。
なのに「この営業は(奥さんに)輪をかけて否定的なことばかり…」
とうとう買うためのメリットを自分であげなくてはならなくなってしまった・・・

社長、目配せで奥さんの了解を得て、
「この機械、いくらするの?」


また、「いらない」客に売りつけてしまったのでありました。



10/29|営業職人コメント(12)TOP↑
事務所に帰ると、担当エリヤで「タイムレコーダーが欲しい」という客があったとのこと。
縫製業だと言う。
なるほど、従業員がたくさんいるからタイムカードを・・・
ということかと思ったら、
「『一番安いものでいい』とのことでした」

要望通り、一番安いものを持って行けば、すぐ売れる。
う〜む、それはいかん。
それは営業の仕事ではない。
だいたい、欲しい客に売るなんぞ、営業の邪道である。


タイムレコーダーのパンフレットを持って訪問。
何に使うか訊いてみる。

『訊く必要はない。欲しいんだから、売ればいいだけだろう?』
だから、それでは営業はいらないっつうの!

実は東京に営業所があり、そこに常駐が一人いる。
その社員のためだと言う。
更に突っ込んで訊くと、
どうやらその従業員が時間にルーズなところがあり、
現在の「手書きの時間記入」だと、誤魔化しがきくので、
タイムレコーダーを入れて、不正をできないようにしたいらしい。

な〜るほど。
なら、「一番安い」機種で十分であろう。
しかし、営業は考える。
そりゃ、入れない方が会社のためだな・・・。
ま、今日のところは、顔見せということで、『売らない』ことにする。
で、『買わない』ように説得をする。

先ず、不正が可能であること。
タイムレコーダーは機械であるから、頻繁ではないが、停電その他で時間が狂うことがある。
誰かがそれを管理調整しなければならないが、
誰がやるか?
おそらくは、常駐さんがやることになるだろう。
であれば、不正も簡単にできることになる。
で、なくても、キーさえあれば不正は簡単である。
総務部門などといったものもない、社長と奥さんが二人で切り回している会社。
キーの管理の方がかえって負担になるおそれがある。

しかし、それだけならまだいい。
害はないからである。

問題は、その社員との信頼関係。
本人が希望してもいないのに、突然タイムカードの導入。
はて?どう考えるか?
すくなくとも営業所を任されている人間、
「オレ信頼されてないんだな・・・」
それくらいは頭が回るのではなかろうか?
事実であれ、濡れ衣であれ、士気を落とすことになろう。
そしてそれは、5分や10分の仕事時間以上のマイナスになるのでは?

実際会ったこともない相手であるので、
一般的に考えられる懸念を社長に問いかけるかたちで
説得。
あとは、社長の判断。

実際には、対話であるため、社長の頷きで結論は見えていたが、
結局は、タイムレコーダーは「売らない」ことになる。
見たか営業の底力!ワッハッハ!

で、オマエは何しに行ったのか。って?
おかげで「いらない」複写機が売れました。

続く・・・かも
10/14|営業職人コメント(6)TOP↑
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